V=F/C
VE(Value Engineering、価値工学)といわれる分野で使われる象徴的な式です。
Value(価値)はFunction(機能)/Cost(価格)であるとするものです。簡単な式ですが、極めて示唆に富むまた使いやすい式です。
外食分野にももちろん援用可能です。
お客様に届けるべきものを価値Vとします。たとえば、
・おいしい
・いい時間を過ごせた
・今度誰かを連れてきたい
こういった様々なポジティブな感情をお客様に持っていただけることを、お客様に提供できた価値Vとします。このVは、価格Cが大きくなると小さくなります。
価格が高くなるのならば、それだけ機能Fが高いことが必要です。
500円のものを食べて「値段相応」とおもう一方で、3000円のものを食べて「値段相応」と思ったりもします。これは、期待するFの大きさが違うからです。
メニュー開発者は、立てた仮説を考慮しながら、このVをいかに高めるかを考えます。
①価格CをあげずにFをあげる、
これはわかりやすいと思います。
そのほかにも、
②価格を下げてより手に取りやすくする、
期間限定半額セールとか、在庫一掃30%OFFなんかが、このケースです。
③価格も機能も同時に上げるなどとなります。
ちゃんと原価をかけて内容を良くしてお客様にさらにご満足いただけるように、売価も上げさせていただく。そして単品当たりの粗利額をもっといただく。そんなときの施策です。
④あるいは、機能を下げて、コストをがっつり下げるのもありです。
ペガサス理論でいうところの「トレードオフ」がこれにあたります。あまり重要でないところを削り落として、その分原価をしっかりと落とすことで、安く提供できます。それによって購買層のすそ野を大きく広げてさらに安くすることができます。多くの飲食チェーン、GUやワークマン、西松屋などの衣料品、1200円カットの理髪店、ダイエーやOKストア、古くは三越も富裕層のものだった呉服を一般庶民に広げる役割を果たしました。西洋の音楽だってかつては一部貴族や教会の独占物で、コンサートホールなどで上演するようになったのはここ200年ほどのことだとか。狭いところに集まって遠くの演奏をみる、いままで音楽を独占していた貴族たちから見れば、チープ化したということになるでしょう。一般大衆化していく過程では多くのものが④の道をたどっています。
ときとして、メニューは何も変わらないのに、売価だけ上がってしまうと、価値Vは落ちるなんてこともあります。
これは、消費者の目線にたてばあってはならないことです。インフレ局面でないときには、やるべき手ではありません。ちゃんと価値の向上を踏まえながら売価をあげていくとか、値上げをするための大義名分をちゃんと立たせるなどの工夫が必要です。
これがインフレ局面だとどうなるか。貨幣価値が落ちていく過程にあるときです。売価をあげないでおくと、貨幣価値の落ちた分だけ実質的なCが下がります。
つまり、価値Vが勝手に上がることになっていきます。インフレに対して手をこまねいているだけの会社であれば、意図しない価値Vの上昇であり、もしかしたらこれでお客様がつくかもしれません。それを意図的にねらっているかと思われる外食企業もたしかにあります。これは考え方なのでしょうが、従業員の立場としてはつらいかもしれないです。
私は、貨幣価値の落ちた分は補填しなければならないと考えます。たとえば今のコロナ禍以降の状況です。貨幣価値が落ちた分、原材料費やお給料、賃料や設備投資などの名目費用が上昇します。従業員の雇用環境の維持向上と、将来の成長の原資の確保のため、価格はあげなければならないと考えます。
どのタイミングでどのくらいあげるべきなのか、それはどうやって考えるのか、いずれかの稿で触れようと思います。
※文頭の写真
娘と作ったわらび餅。TOMIZで買ってきた本わらび粉で作りました。精製度合がそれほど高くないためか、黒い色をしていて、香りは・・「飼葉(かいば)」!馬小屋のにおいを優しくした感じというのでしょうか。一口目はくさいのですが、次からはとてもおいしく感じます。
娘と共に作れたというだけで、一生の思い出に。V(価値)はとてつもなく高いです。